今日は雑感のカテゴリーで記事を書きたいと思います。このカテゴリーは演奏会やレコーディングのレビュー、新作リリースのニュースとは違い、ふと思ったものを記事にするもので、このカテゴリーの前回の記事はチャットAI (ChatGPT、Bing GPT)にオススメの録音を聞いてみた、という記事を書きました。

今回は、ドラゴンクエスト (略してドラクエ)の音楽について書きたいと思います。前身のFC2ブログでも記事「ドラクエからクラシック音楽へ」を書いたのですが、久しぶりにドラクエ音楽で共感することが多々ありました。

同じスクエアエニックスのゲームでも、ファイナルファンタジーシリーズはApple Musicでサウンドトラックが聴けるのですが、ドラクエは公式のサントラを配信していません。なので、CDで購入することにしたのですが、サントラとは別にオーケストラ演奏版の「交響組曲ドラゴンクエスト」シリーズがCDで出ています。

交響組曲をドラクエ音楽の生みの親の作曲家すぎやまこういちさん自身が指揮したものが3種類レコーディングされており、日本のNHK交響楽団東京都交響楽団、イギリスのロンドン・フィルハーモニー管弦楽団があります。録音時期が古いN響とのものは廃盤になって入手困難ですが都響とロンドンフィルとのものは品薄ですが新品で入手できます。

ロンドンフィルはこのサイトでもサー・ゲオルグ・ショルティとの「フィガロの結婚」アルフレート・ブレンデルのピアノ独奏でベルナルト・ハイティンクが指揮したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集など名盤を紹介してきた、イギリスの名門オーケストラ。

ドラクエ1から7まではロンドンフィルとのものがあるので、迷わずにこれを買い、新しめのドラクエ10と11は都響のものを購入。そしてピアノ編曲版の楽譜も買いました。

ドラゴンクエストの交響組曲のCDと楽譜
ドラゴンクエストの交響組曲のCDと楽譜

クラシックを知っているとより楽しめるドラクエ音楽

以前2016年3月28日の日経新聞の記事で、すぎやまこういちさんとの対談が掲載されて、ドラクエの舞台は中世ヨーロッパを思わせる世界であることから、「その意味でもオーケストラが似合う。作曲するときからオーケストラ音楽として発想しています」とか、「青少年の啓蒙は初期から意識してきました。全国津々浦々、どこのオーケストラでも演奏できるように、楽譜は特殊な楽器を使わずに書いています」と語っていました。

ドラクエからクラシック音楽やオーケストラに入る方も多いでしょうし、逆にクラシック音楽を知っているとドラクエ音楽をより楽しめます。

例えば、バロック音楽。ドラクエ1は主人公の勇者がラダトーム城で王様からラスボスとなる竜王の退治を依頼され冒険を開始するのですが、このBGMとして作曲された「ラダトーム城」という曲は、まさにバロック音楽。ヨハン・セバスティアン・バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻のホ短調のフーガを思い出します。

調性は違いますが、1音ずつ音が下降する旋律やフーガ (独立したパートが同時に演奏される曲)が似ている感じがします。Twitterでも紹介しました。

さらにドラクエⅡの「王城」、ドラクエⅢの「王宮のロンド」、ドラクエⅣの「王宮のメヌエット」とお城といえばバロック音楽という感じがします。また、ロンド(異なる旋律を挟みながら、同じ旋律を何度も繰り返す形式)、メヌエット(フランス発祥の宮廷舞曲のひとつで基本的に4分の3拍子で、通常は穏やかな性格を帯びた音楽)はクラシック音楽でもよく取り入れられた作曲技法。さらにドラクエⅦには「封印されし城のサラバンド」もあり、サラバンドはバロック音楽でよくある3拍子による荘重な舞曲です。

ライトモチーフ?

私はドラクエ音楽の楽曲ごとの公式な解説を読んだことがないので、ここは憶測になってしまうのですが、数々のオペラ (正確には楽劇)を作曲したリヒャルト・ヴァーグナーのライトモチーフの技法がドラクエ音楽にも出てきます。

ライトモチーフとは登場人物の性格を表すような短い旋律が曲の随所に現れるというものですが、ドラクエⅦには「哀しみの日々」、「愛する人へ」と「哀しみを胸に」で心に訴えかけるライトモチーフのような類似した旋律が出てきます。そしてこれはドラクエIXの「天の祈り」、「星空へ」、ドラクエXの「天空の世界」にも出てくる旋律です。私はこれはドラクエIの「フィナーレ」にある旋律が発展したものだと思っています。

ドラゴンクエストの音楽の類似した音型
ドラゴンクエストの音楽の類似した音型

ドラクエⅩⅠ「過ぎ去りし時を求めて」はドラクエシリーズ30年間の集大成としての作品であり、ドラクエⅠの以前の世界を描いているため、音楽にも過去の作品、特にドラクエⅢの音楽が登場します。例えば交響組曲ドラゴンクエストⅩⅠのエンディング曲の「過ぎ去りし時を求めて」はドラクエⅢのエンディング曲「そして伝説へ」を引用しています。

楽器の魅力

また、ドラクエ音楽ではオーケストラの楽器の魅力も楽しめます。例えばドラクエⅤの「王宮のトランペット」ではトランペットが軽やかなリズムですし、ドラクエⅦの「王宮のホルン」ではホルンが重厚なシンフォニックなメロディを出しています。また、ドラクエⅦの「愛する人へ」はヴァイオリンが高音で官能的な美しさを、「迫り来る死の影」ではコントラバスとチェロが低音で不気味さを掻き立てています。

また、クラシック音楽に出てこない日本らしい曲もあります。ドラクエⅢのジパングという国でのBGM「ジパング」や、ドラクエXの王都カミハルムイのBGM「風雅の都」では和楽器のような音がする楽器も使われています。

ドラゴンクエストシリーズの音楽の魅力と、クラシック音楽へのつながりをまとめました。私も交響組曲をまとめて聴いてみて、ピアノ編曲の楽譜も見ることで、これまで気付かなかったドラクエ音楽の魅力をたくさん感じました。

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