このアルバムの3つのポイント

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 エミール・ギレリス/オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1972年)
ブラームス ピアノ協奏曲第1番 エミール・ギレリス/オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1972年)
ブラームス ピアノ協奏曲第2番 エミール・ギレリス/オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1972年)
ブラームス ピアノ協奏曲第2番 エミール・ギレリス/オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1972年)
  • 鋼鉄のタッチ、エミール・ギレリスの詩情と力強さ
  • オイゲン・ヨッフムとベルリンフィルの硬めのサウンド
  • 硬派で不器用さもあるブラームス

今日は久しぶりに記事を書きます。クラシック音楽は毎日色々と聴いているのですが、少し前からApple Music でサブスクを始めましたが、まだクラシック音楽を聴くには試行錯誤で試しているという感じで、記事にするほど聴き込んでいるのが無かったので書くのが遅くなりました。

サブスクだとやはりJ-POP や洋楽、BGM なども含めて曲数が多い(Apple Music 公式だと9,000万曲以上)ので、色んなジャンルを聴いてみたくなる一方で、1つ1つを聴くのが雑になる傾向にあります。イントロだけ聴いてうーんと思ったら次の選曲に移ってしまいがち。

クラシック音楽についても、Amazon Music などと同様に、人気演奏家や人気曲がヒーリングに偏りがちなところがあって、気分転換ができるモーツァルトの曲や、仕事で集中できるBGMとかのアルバム、プレイリストに含まれている演奏家が人気が高い傾向あって、ガチなクラシック音楽愛好家から人気がある曲は何だろうとかが掴めずにいます。

そんな中、今週試してみたのは、オットー・クレンペラーヴォルフガング・サヴァリッシュオイゲン・ヨッフムなどの玄人の方が好んで聴いている指揮者を重点的に聴くこと。クレンペラーはフィルハーモニア管弦楽団とのベートーヴェン交響曲全集(1955ー60年)のアルバムを持っていてこちらの記事で紹介していますし、サヴァリッシュはまだ記事は書いていませんがシューマンの交響曲全集でよく聴いていました。

ヨッフムについてもドイツ・グラモフォンの管弦楽録音全集とEMI での2回目のブルックナーの全集を持っていて、ブルックナーの交響曲全集(1回目)、シュターツカペレ・ドレスデンとの2回目テ・デウム(1965年)ベートーヴェンの交響曲全集(1952ー61年)を記事で紹介しています。

ただ、いぶし銀の指揮者と評されたヨッフムはもっと聴いておきたいなと思って、Apple Music でも重点的に聴いてみました。そこで出会ったのが今回紹介するブラームスのピアノ協奏曲全集。ヨッフムらしく硬派で重厚なオーケストラにピアノも負けじと硬い音で協演していました。ピアノ独奏は旧ソ連(ウクライナ)のピアニスト、エミール・ギレリスです。

ギレリスのピアノ協奏曲と言えば、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団とのベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」をこちらの記事で紹介しましたが、今回はギレリスがベートーヴェンと同じく得意としたブラームス。しかもオーケストラがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1972年6月にベルリンのイエス・キリスト教会でセッション録音されたものです。タイミングとしては、先に12日、13日が協奏曲第2番(Op.83)、16日から17日に第1番(Op.15)という順番だったそうです。

第1番については、冒頭からゆったりとしたテンポでヨッフム&ベルリンフィルが始めますが、小刻みで残響をあまり残さないでティンパニが雷鳴を表しています。荒削りにティンパニを連打して輪郭がぼやっとする演奏も増えてきましたが、このときのヨッフムは丁寧に演奏を進めています。ベルリンフィルの重厚感もありますね。トラック時間3:33あたりからの弦が下降するフレーズではちょっと音質が硬い(演奏よりもレコーディングの問題)かなという印象を受けますが、きっちりとフーガの複数の旋律が描かれています。続くギレリスのピアノも穏やかに始め、詩情すら感じます。ピアノの入りから情熱的にするピアニストもいる中、ギレリスはヨッフムとベルリンフィルのオーケストラの入り方と同様に、丁寧に演奏していきます。第1楽章トータルでも24分15秒ですので、やや遅めの演奏になっています。

「鋼鉄のタッチ」と表現されたギレリスの硬いピアノ演奏はここでも感じられ、硬派で力強いです。第1楽章クライマックスのコーダでの硬いタッチでの連打にギレリスらしさが出ています。

第2楽章でも硬派な組み合わせで表現される優しさとでも言うのでしょうか。派手さは無いですが心の琴線に触れます。第3楽章ではロンドらしい軽やかな曲ですが、ギレリスが弾くと一音一音のタッチがズンズンと来ます。ヨッフムとベルリンフィルの重厚なオーケストラとギレリスの硬いピアノが調和しています。

ピアノ協奏曲第2番でも、ウィーンの軽やかさと違う「これぞベルリン」という重厚さを感じる演奏。特に第1楽章の7:52あたりからのギレリスのピアノのパワーがすごいです。情熱でごまかした荒々しい演奏や軟弱な演奏に辟易している方には良いと思います。

ギレリス×ヨッフム×ベルリンフィル。硬派な組み合わせでのブラームスのピアノ協奏曲2曲です。

オススメ度

評価 :4/5。

ピアノ:エミール・ギレリス
指揮:オイゲン・ヨッフム
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1972年6月12ー13日(第2番), 16-17日(第1番), ベルリン・イエス・キリスト教会

iTunesで試聴可能。

1974年の米国グラミー賞「Best Instrumental Soloist Performance with orchestra」にノミネートされるも受賞ならず。

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