このアルバムの3つのポイント

カルロ・マリア・ジュリーニ シカゴ・レコーディングズ
カルロ・マリア・ジュリーニ シカゴ・レコーディングズ
  • ジュリーニ 壮年期の シカゴ 響とのブラ4
  • 晩年の再録からは想像できない「遅くない」演奏
  • グイグイと進む推進力と引き出される旋律

アメリカの名門オーケストラであるシカゴ交響楽団はフリッツ・ライナーが音楽監督を務めた時代に第一黄金期を迎え、そしてゲオルグ・ショルティが音楽監督を務めた1969年から第二の黄金期を迎えました。この時代には首席客演指揮者にカルロ・マリア・ジュリーニが就任し、タカ派のショルティとハト派のジュリーニといった、異なるタイプの指揮者をシカゴ響の要所に置くことによって、様々な名演をおこなってきました。

シカゴ 響による ブラームス のレコーディングは

ブラームスの交響曲については、ショルティ自身はあまりレコーディングしていませんが、唯一の録音である1978年から1979年にシカゴ響とおこなった交響曲全集で米国グラミー賞の「BEST CLASSICAL ALBUM」と「BEST CLASSICAL ORCHESTRAL RECORDING」の二冠を受賞してます。さらにドイツ・レクイエムのアルバムで「BEST CHORAL PERFORMANCE, CLASSICAL (OTHER THAN OPERA)」で三冠目も取る快挙でした。

ジュリーニ と シカゴ 響とのレコーディング

ジュリーニはシカゴ響の首席客演指揮者を1978年まで務め、その年にロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任しています。9年間という期間に関わらず、レコーディングだけでもマーラーの交響曲第1番「巨人」(1971年)マーラーの交響曲第9番(1976年)ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(1976年)ドヴォルザークの「新世界より」(1977年)などなど、音楽評論家からも評価の高い録音をリリースしています。

1969年から1970年代前半はEMI(現ワーナー)とのレコーディング、そして1970年代後半からはドイツ・グラモフォンと契約してレコーディングするようになっています。

ジュリーニはブラームスの交響曲を全集では2回録音しています。1回目がEMIレーベルでのイギリスのフィルハーモニア管弦楽団を指揮した1961年〜1968年の交響曲全集。そして2回目は晩年にドイツ・グラモフォンレーベルでのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した1989年〜1991年の交響曲全集。さらに、交響曲単独だと、EMIでのシカゴ響との交響曲第4番(1969年)、ドイツ・グラモフォンでのロスフィルとの交響曲第1番(1981年)第2番(1980年)などがあります。

フィルハーモニア管との録音ではあまりジュリーニらしくないというか、割と標準的な演奏ながらも旋律を美しく引き出すところに特徴を感じましたし、シカゴ響やロスフィルとの演奏ではさらにオーケストラが力強くなったことにより印象的でした。晩年のウィーンフィルとの全集では、テンポが極限まで遅くなりまるでスコアから旋律をバラバラにほどいたかのような個性的な演奏でしたが、こちらはオススメはしづらいですね。

フィルハーモニア管の録音から1年3ヶ月後の ブラームス の交響曲第4番の再録

さて、今回はシカゴ響との1969年のブラームスの交響曲第4番の録音を紹介します。ブックレットを見るとレコーディング日は1969年10月15日の1日だけとなっており、満足の行く出来だったので1日でセッションを終わったのでしょうか。フィルハーモニア管との全集では第1番〜第3番が1961年/1962年に録音されたのですが、第4番だけ間が空いて1968年4月と7月の録音となっています。シカゴ響との第4番の再録はこの1年3ヶ月後のものなので、ジュリーニとしては作品への解釈が深まっていた時期だったのでしょう。

入手困難になっている ジュリーニ & シカゴ 響 の ブラームス のCD

ただ、このジュリーニ/シカゴ響のブラームスの交響曲第4番の録音ですが、CDでは現在入手困難になってしまっています。単独発売は国内盤の品番WPCS-50838が2013年にリリースされていますが、既に廃盤。EMIレーベルでのジュリーニとシカゴ響の録音のCDセットがワーナーから「カルロ・マリア・ジュリーニ ザ・シカゴ・レコーディングズ」とか、「シカゴ・イヤーズ」などの名前でリリースされていましたが、それも品切れになっているようです。

私はまだEMIのときだったリリースされた「カルロ・マリア・ジュリーニ ザ・シカゴ・レコーディングズ」でこの録音を聴いていますが、この時代のジュリーニとシカゴ響の演奏は今でも人気があるので、再プレスしても良いのではと思います。

第1楽章から驚かされます。毅然とした、と表現すれば良いのでしょうか。旋律がくっきりと表されることで、全く迷いがなく、キリッとしているかのように思えます。シカゴ響の弦の美しさと輝くような金管の音色が良いです。

ジュリーニ にしては標準的な速さ

演奏時間も第1楽章が12:51、第2楽章が12:22、第3楽章が7:00、第4楽章が10:56で、テンポも標準的で晩年のジュリーニの演奏を知っている方だとむしろ速いと思えるぐらいです。

シカゴ 響の明朗な響きと力強さ

第2楽章は内省的な曲ですが、ジュリーニはシカゴ響からじっくりと柔らかい音色を引き出しています。第3楽章は少しゆったりめのテンポで演奏されますがきらびやかなサウンドでいかにもシカゴ響らしい明朗さがあります。

そして第4楽章がとても良いんです。弦がこれでもかというぐらいに美しいですし、フルートやオーボエのソロも浮き立つような存在感があります。そして徐々に力を増していくクライマックスでは、ジュリーニがゆったりとしたテンポに落としつつも丁寧に旋律を鳴らし、金管が力強く高らかにファンファーレを奏でます。そのままゆったりのまま大きなうねりが作り上げられ、オーケストラ一丸となった強音で圧巻のフィナーレ。

ただ、この録音は音質が悪いのが玉に瑕。演奏の途中ですり切れているかのようにボリュームが弱くなってしまうところがあるので、オススメ度合いとしては星を一つ下げた評価にしたいと思います。

首席客演指揮者だったカルロ・マリア・ジュリーニが壮年期に録音したシカゴ響とのブラームスの交響曲第4番。CDでは入手困難になってしまっていますが、もし聴く機会があればぜひ聴いてみていただきたい1曲です。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
シカゴ交響楽団
録音:1969年10月15日, シカゴ・メディナ・テンプル

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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