このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第6番 ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 (2012年)
ブルックナー交響曲第6番 ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン/オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 (2012年)
  • ズヴェーデンとオランダ放送フィルによるオランダコンビ
  • ほの暗いメランコリーさと幅の広いダイナミックさ
  • オランダのエジソン賞で生涯賞を受賞

前回の記事トーマス・ダウスゴーベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団のブルックナーの交響曲第3番の録音を紹介しましたが、今回もブルックナーについてです。

交響曲第6番を特に聴き入っているのですが、過去のレコーディングではあまり数が少ないこの交響曲は、真価が認められた近年になってきて録音も充実してきました。Apple Music だとどのアルバムが人気なんだろうと検索キーワード「bruckner symphony no.6」で検索したら、マリス・ヤンソンスベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を筆頭にランキングがずらっと並んでいます。「ブルックナー 交響曲第6番」と日本語で検索すると日本の演奏家が上位になるのですが、ワールドワイドで何が聴かれているか知りたかったので英語で検索しました。

このランキング上位にあったのがヤープ・ヴァン・ズヴェーデンが指揮したオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団と録音。

Apple Musicでの「Bruckner Symphony No.6」での検索結果
Apple Musicでの「Bruckner Symphony No.6」での検索結果

まずズヴェーデンの名前に馴染みがない方も多いでしょう。私も恥ずかしながらこのApple Music で初めて知りました。

昨夜(2023年10月8日の夜9時)のNHK Eテレ「クラシック音楽館」でニューヨークフィルのウーゼドム音楽祭2022のコンサートを放映していましたが、その指揮を務めたやや小柄で猫背気味なスキンヘッドの男性こそ、ズヴェーデンです。

指揮者のヤープ・ヴァン・ズヴェーデン, ニューヨーク・フィルハーモニックの公式HP より

ズヴェーデンは1960年12月生まれのオランダの指揮者兼ヴァイオリニスト。

オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団でヴァイオリン奏者として活躍し18歳にして首席奏者になっています。指揮に転向して1997年から。2012年から香港フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、2018年からはニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務め、2023/24の今シーズンがこのポストの最後。グスターボ・ドゥダメルが2026/27年のシーズンから次期音楽監督に就任予定です。一方でズヴェーデンは香港フィルのポジションはキープしつつ、2024年1月からはソウル市立交響楽団の音楽監督に就任します。

また、コンセルトヘボウ管が2024年のブルックナーのアニバーサリーイヤーにリリースする交響曲全集でもズヴェーデンの名前があります。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、2024年9月4日のブルックナー生誕200年に向け、9人の指揮者(イヴァン・フィッシャー、チョン・ミョンフン、クラウス・マケラ、クリスティアン・ティーレマン、アンドリュー・マンゼ、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン、ウラディーミル・ユロフスキ、シモーネ・ヤング、リッカルド・シャイー)によるブルックナー・チクルスを1年半かけて行い、その記念すべき日をお祝いします。

コンセルトヘボウ管によるブルックナー交響曲全集の商品説明 (タワーレコード)より

オランダの「ほの暗さ」

2005年から12年にかけてオランダのオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 (オランダ語でRadio Filharmonisch Orkestで略称RFO、英語ではNetherlands Radio Philharmonic Orchestra)の首席指揮者を務めたズヴェーデンは、ブルックナーの交響曲全集を完成させ、チャレンジ・クラシックスからリリースされています。

オランダ放送フィルは2014年にエジソン賞の生涯賞を受賞していますが、評価された功績の中にはズヴェーデンとのブルックナーの交響曲全集も含まれています。

交響曲第6番はその時代の最後のほうのもので、2012年6月にヒルフェルスムにある放送用のMusic Center Orchestral Studio 5でのセッション録音。スコアはノーヴァク校訂版を使用。

コンセルトヘボウ管で研鑽したズヴェーデンと、オランダ放送フィルによる演奏は、ウィーンフィルやミュンヘンフィルのような柔らかさ・しなやかさがあるブルックナーと違ってオランダならでは「ほの暗さ」と「メランコリー」を感じます。第1楽章は極めてシリアスで、マエストーソの指示どおり雄大。金管も渋い音色で、太陽のような明るさとは違って曇りがちな空を彷彿とさせます。ズヴェーデンのマッシブな指揮に付いてダイナミックさもレンジの幅広いです。ヴァイオリン奏者出身ということもあり、弦の鳴らせ方が抜群にうまいですね。第3楽章のスケルツォはふざける要素は全くなく生真面目そのもの。フィナーレでも力強く実直にブルックナーの音楽を響かせます。

Apple Musicでランキング上位だったのが縁でじっくり聴いてみたのですが、人気なのも納得。皆さんよくご存知ですね。

アニバーサリーでのコンセルトヘボウ管を指揮するズヴェーデンのブルックナーにも期待が高まります。

ズヴェーデンとオランダ放送フィルによるオランダならではの「ほの暗さ」があるブルックナー。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
録音:2012年6月11-14日, MCOスタジオ5

Apple Music で試聴可能。

2014年のオランダのエジソン賞で生涯賞 (Oeuvreprijs)を受賞。

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