このアルバムの3つのポイント
- ショルティがシカゴ響の音楽監督勇退前のライヴ録音
- 20年ぶりの2度目のマーラー交響曲第5番録音はウィーンでのライヴ
- ゆったりとした余裕とまろやかさ
ショルティとシカゴ響と言えば
指揮者のサー・ゲオルグ・ショルティは1969年にシカゴ交響楽団の音楽監督に就任しています。最初の演奏及び最初の録音で取り上げたのが、マーラーの交響曲第5番嬰ハ短調。
こちらの記事で紹介しましたが、1970年の録音は速めのテンポで押し切り、シカゴ響を鳴らしきったスケールの大きな演奏で、ショルティ×シカゴ響の代名詞ともなった名盤です。
シカゴ響との録音に満足したショルティは、ロンドン交響楽団やロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と録音していたマーラーの交響曲第1番、第2番、第4番、第9番も再録音をおこない、シカゴ響だけでマーラーの交響曲全集を完成させました。
音楽監督退任を発表した1990年
ショルティは1991年にシカゴ響の音楽監督を退任し、後任をダニエル・バレンボイムに託すことを1990年に発表しています。22年間の長きに渡って音楽監督を務めてきたシカゴ響と集大成を作っていくのが1990年以降です。
1990年にショルティとシカゴ響は初めてソ連に演奏ツアーに行き、こちらの記事で初回したブルックナーの交響曲第8番は11月20日と21日のサンクトペテルブルクでのライヴ録音でした。
その帰路にヨーロッパを巡っていますが、11月30日にウィーンのムジークフェラインザール(楽友協会)で演奏されたのがこのマーラーの交響曲第5番。
1970年と1990年の録音の違い
1970年と1990年のショルティとシカゴ響のマーラーの交響曲第5番の違いは以下のとおりです。
演奏時間: 大きくは変わらないですが、1990年の再録のほうが若干ゆとりがあります。
録音時期 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 | 第4楽章 | 第5楽章 | トータル |
---|---|---|---|---|---|---|
1970年3月〜4月 | 11:54 | 13:52 | 16:39 | 9:50 | 13:40 | 66:55 |
1990年11月 | 12:35 | 14:30 | 16:58 | 9:42 | 14:53 | 69:13 |
サウンドの尖り具合: 1970年の録音では耳をつんざくようなエッジの効いた演奏でしたが、1990年では適度に丸みを帯びたサウンドになっていて、滑らかで聴きやすいです。
音質: 1970年の録音はマスターテープに起因すると思われる音割れがあり、最大級の音量でバリバリと割れてしまったところがありました。1990年の録音はデジタル録音なので、音質はクリアになっています。ただ、ライヴ録音なので聴衆の咳の音が何箇所かに入ってしまっています。
どちらもシカゴ響のパワフルさ、ショルティの精緻なコントロールという面では同じですが、より引き締まったサウンドでワイルドに攻めた1970年の録音と、晩年になって丸くなったショルティの円熟のタクトで聴く1990年の録音。私は旧録のほうが好みですが、どちらも素晴らしいと思っています。
まとめ
ショルティ×シカゴ響の代表的な作品を20年ぶりに録音した今回のアルバム。旧録との違いを聴き比べつつ、ショルティとシカゴ響の変化を感じる名演でした。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1990年11月30日, ウィーン楽友協会・大ホール(ライヴ)
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試聴
iTunesで第4楽章を試聴可能。また、上記タワーレコードで試聴可能。
受賞
特に無し。
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