このアルバムの3つのポイント

マーラー交響曲第6番「悲劇的」 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1970年)
マーラー交響曲第6番「悲劇的」 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1970年)
  • ショルティ/シカゴ響の黄金時代幕開けのマーラー
  • 速めのテンポで押し切った、容赦なく突き進む悲劇
  • アンダンテで魅せる官能美

1969年からシカゴ交響楽団の音楽監督に就任したゲオルグ・ショルティ。これまでヨーロッパでオペラを中心に活動していた指揮者が、アメリカでシンフォニー・オーケストラのポジションに就くことにはショルティ自身も悩んだと思います。

ただ、持ち前の前向きさとエネルギーでショルティはシカゴ行きを決断、結果的にこのオーケストラの黄金時代を生み出すことになりました。

音楽監督に就任して、最初に録音されたのがマーラーの交響曲第5番。こちらの記事に紹介しましたが、1970年3月の録音で、エネルギッシュでボルテージ全開。シカゴ響を鳴らしきった名演として今でも語り継がれるレコーディングです。

そして同時期(1週間後)に録音されたのが、マーラー交響曲第6番「悲劇的」

ショルティのレコーディングはCDで200枚ほど聴いてきて、こちらの記事にオススメ10選を紹介しましたが、ショルティを語る上で私の中で外せないのがこの「悲劇的」です。

「悲劇的」の録音は他の演奏家のものも多く聴いてきましたが、ショルティ/シカゴ響が決定的に違うのは、テンポ。演奏時間が第1楽章21分06秒、第2楽章スケルツォが12分33秒、第3楽章アンダンテが15分30秒、そして第4楽章が27分40秒。トータルで76分56秒で、CD1枚に余裕で収まります。

例えば、シカゴ響が比較的新しい2007年にベルナルト・ハイティンクと録音した「悲劇的」ではトータルで90分41秒も掛かっていました。ハイティンクは晩年になるほど演奏が肥大化していったので極端な例かもしれませんが、ショルティの演奏時間との差が明確に出ています。

第1楽章からショルティとシカゴ響は速めのテンポで、容赦なく、無慈悲に、突き進みます。チェロとコントラバスの低音のラが不気味に奏でられ、小太鼓(スネアドラム)がチキシと加わり、縦のラインが揃った盛大な行進曲へと進んでいきます。

シカゴ響の特徴である金管の力強さもこの曲にはマッチしていて、ホルン、チューバ、トロンボーン、トランペットが勢いがあります。弦の速弾きもめちゃくちゃうまいですし、まさにヴィルトゥオーソ・オーケストラ。

この演奏では、第2楽章がスケルツォ、第3楽章がアンダンテの順ですが、第1楽章が終わったと思ったらまたスケルツォで怒り狂うかのような世界が表現されています。速めのテンポで押し切った演奏で、ただただすごいです。

第3楽章のアンダンテでは、シカゴ響の弦セクション、特にヴァイオリンの官能美に惹かれます。ショルティはオペラで活躍していたので、ドラマティックな表現をオーケストラにも持ち込んでいるのですが、ヴァーグナーを指揮したときに引き出した官能美が、このマーラーの音楽でもよく現れています。

はち切れんばかりの哀しみと美しさです。

第3楽章でうっとりした後は、いよいよ第4楽章のフィナーレです。シカゴ響のパワーを100%出し切った演奏でしょう。

ハンマーも力強すぎて、頭がカチ割れたようにクラクラします。

私は1992年リリースのCD(Deccaの#4250402)を聴いているので音質が若干悪い(割れるところがある)のですが、最近ではSACDハイブリッドやSHM-CDも出ているので、音質が改善されているとのレビューを目にしています。私も買い直そうかと想っています。

ショルティとシカゴ響の黄金時代の幕開けとなった、マーラーの交響曲。「悲劇的」では、無慈悲に突き進みドラマを生み出しています。第3楽章アンダンテでの官能美も聴き応えがあります。ショルティの膨大なレコーディングの中で、私が一番好きなディスクの一つです。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1970年4月2, 6, 8日, シカゴ・メディナ・テンプル

iTunesで試聴可能。

特に無し。1970年の米国グラミー賞「BEST CLASSICAL PERFORMANCE, ORCHESTRA」にノミネートされるも受賞ならず。

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